父が肺炎のおそれがあるため、かかりつけ医の紹介の病院へ行った。
はじめて行ったその病院は、郊外の住宅街の中にあった。
外観からしてどーもなー、と気が滅入った。
診察室に入ると、アタマの軽そうなニイチャンが、父の様子を見ることも、ワタシから日常の様子を聞くでもなく、
「ハイ、入院!」と言った。
「え?そんな準備してませんよ」というと、
「じゃあ、検査」
とりあえず父の胸に聴診器を当て胸の音を聴く。
父はおびえて、「イタイイタイ」と大声を出した。
すると化粧だけやたら濃いおばあさんの看護婦2人が
「ハイ、黙ってね」と父の口を自分の手で塞いだ。
医者と看護婦の見た目もフツウじゃないけど、
今時こんなやり方って、アリ?一瞬信じられなく、
あわてて父のそばにいてあげようとしたら、
「検査は一緒にいなくていいです。放射線浴びますし。用があったら呼びますから」
おいおい、どんな検査すんねん。
「検査なら、おとといしましたよ」と私が言うと
「今のデータが知りたいのです!」と怒鳴るニイチャン。
まぁ、仕方ないので医者の言うとおりに検査を受けた。
ずいぶん時間がかかるなぁ、と思ったら
脳のCT、肺のレントゲン、腹部のCT、血液検査……と、ひと通りやっていた。
幸い、このときの検査の結果では特に大きな問題はなかったので、医療的な処置は断ることができた。
ニイチャンは、
「肺炎は高齢者の死因の2位ですからね」と大まじめに言う。
そして誤えん性肺炎を防ぐために胃ろうやューブ栄養の話をした。
父はまだ口から食べられる。口から食べられるうちはそうさせてあげたい。と言うと、
「では、もし万が一なにかあっても、ご家族のご希望ということで」
と念を押してくるので、
「そちらに過失のない限りは了解しました」と言っておいた。
待合室で会計を待っていると、ニイチャンのそばにいたもう一人の男が駆け寄ってきて耳打ちした。
「あの、わたくし、こちらの病院の事務局長です。
あの、先ほど先生がご説明があったように・・・」
と、また責任の念押しを言葉丁寧に言ってきた。
「ですから過失がなければ責任は問いません」とピシャリと言ったら、
ビビったのか、迎えの車が来るまで見送ってくれた。
そんな手口にダマされるかいってのっ!!
「見た目が9割」という、身も蓋もない本があるが、
まぁ、確かに・・、と思える病院だった。
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