アンさんは日本語で、私はすっかり忘れた英語を辞書を引きながらゆっくり、いろんな話をした過ごした。
以前、叔父がスミソニアン博物館に行ったとき、「エノラゲイ」のTシャツを昭和6年生まれの父に買ってきたことがある。
神戸の空襲の際、「エノラゲイ」に 追いかけられた父はとても気分を害していた。
ブラックジョークのつもりだったのに、アンさんは心底申し訳なさそうな顔をした。
ちょうど大騒ぎになっていた「慰安婦問題」ではないけれど、自国の加害の意識なしに、相互理解なんてありえないんじゃないだろうか。
アンさんに「日本国憲法」について、
「アメリカからの押しつけだ、という理由で憲法を変えようという勢力が強くなってきている。現憲法は戦争から得たアメリカからの贈り物だと思う」と私が言うと、アンさんは涙を浮かべていた。
それでも幼い頃をアメリカ南部で育ったアンさんは
「人それぞれに生まれ持った背景がある。だから自分と異なる意見でも排除してはいけない」という。
現憲法みたいな人。
おばさん版ドナルド・キーン。
(それにしても「ニホン大好き」な外国人に対して、期待を裏切ってばかりで申し訳ない! という気持ちになってしまうのは私だけ?)
アメリカの銃規制(持つ「自由」を禁止することはできない)やTPPの話(アメリカの農業団体は強い力を持っている。日本が圧倒的な食糧輸入国であって TPP参加に警戒するイメージがアンさんでさえ持てていないこと)、日本と同様に存在するアメリカ国内の地域間格差、過疎と高齢化(に伴う公共施設の統廃 合)…。
長いつきあいの友人との語らいのような時間を過ごした。
アンさんはiPadなど電子機器を駆使しながら、今回の旅行を記録していた。
元・大手コンピューター会社のプログラマーと聞いて、妙に納得。
「良きアメリカ」を体現した人だった。
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