阪神大震災から16年、この日は朝から特集だ。
NHKの朝の情報番組では、急な災害時にどう対応するかの特集だった。
停電で懐中電灯もろうそくも準備がなかった場合、
「アロマキャンドル」を使う方法とか、レトルト食品を温かく
おいしくいただく方法…とか。
「わぁ、おいしい!」と子ども達は大喜び。
悲惨なサバイバルも工夫一つで非日常の楽しいひとときへ…。
うーん…。
ワタシも神戸西部の実家のマンションで被災している。
ガタガタガタガタという細かな揺れがしばらく続いた後、
グワッシャン、グワッシャンしなるように揺れた。
ペンダント式の電灯は振り切れて落ち、父は腰を抜かして動けなくなった。
私たち家族や地域の人たちの頭にとっさに浮かんだのは、
震災の2ヶ月ほどまえの明石海峡大橋の主塔工事だった。
高さ65M直径80メートルの巨大なケーソンを
流れの速い海峡に埋めた。
その杭を打つ工事が断層を刺激したのではないか…
と、地元の人たちはまことしやかに噂した。科学的には根拠もないけど。
白砂青松、風光明媚な海峡に現れた人口建造物は
当時はそれくらい異様で、受け入れがたかった。
噂といえば、許し難い卑劣な「デマ」も流れた。
私の住むマンションの管理人さんが女児にいたずらをはたらいた、
というのだった。
ほんとうに優しく親切な管理人さんで、父が倒れたときなど、
自宅で手当てしてくれたり、家まで手伝いに来てくれたほどの人だ。
その管理人さんに限って…。春に新しい管理人さんに引き継いで
ふるさとへ帰られてしまった。
関東大震災の時に、朝鮮人が暴動を起こしたとデマが流れ、
虐殺が行われた、ということがあったが、
こういう大災害の時に、信じられない、とんでもない、ありえない
噂が流れる、ということは、こういうことなんだと、実感した。
ある避難所ではレイプもあった、と、神戸以外の女性団体からの「報告」を聞いた。
わたしはそんな話を初めて聞いたので、西宮の避難所にいた女性の友人にたずねると、
あの状況でありえない!よその人は知らないから、勝手なことを言う!
と怒りで泣いた。
私はその報告について確認すると、「人づてに聞いた」というもので、
実際本人から持ちかけられた話ではなかった。
「そういうデマもあるんです」と言うと、きょとんとしていた。
女児や女性への人権侵害は許せない行為だ。
だけど、「許せない行為」だけに、それが「デマ」だった場合、
向けられた怒りや非難から誰がどうやって「加害者」を守るのか。
「人権侵害」を掲げ、「人権侵害」に手を貸すことの方が恐い。
特殊な状況で、愉快犯がデマを流すことは大いにある。
ロウソクの使い方やレトルト食品の温め方より、
デマに流されない方法を教えてもらいたいものだ。
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