大阪のデパートで催される「加賀・能登展」に、
知り合いが出店するのでのぞきにいった。
初日の夕方、食品を中心にけっこうな人だかり。
知り合いを捜していると、人混みの中フラフラと、
今にも倒れそうなおじいさんが向こうからやってきた。
思わず近くの売り場にあった丸椅子をひっぱり出し、
「ここ、座って!」と言うと、
声を出すのもしんどそうに手刀を切って腰かけた。
後を追いかけてきたオジサンは能登・羽咋の糀屋さん。
私が輪島におったことがわかると、
「悪りぃねー、オレの父ちゃんの友達ねんて」と、いきなり同郷モード。
わざわざ豊中から電車で「かぶらずし」を買いに来てくれたそう。
オジサンは稼ぎ時で売り場も離れにくい雰囲気。
かといって知り合いのおじいさんも放っておくわけにもいかず…。
「えーよ、私、駅まで送ってあげるさけ!」
「えーんけ!?」
「なーもなーも。能登の人間が能登の人間を助けるんは
あたりめーや!」と胸を張った。
おじいさんは椅子に座っても肩で息をして汗をダラダラ流している。
救護室も勧めたが、大丈夫とゆずらないので、
「胸や背中、痛くねーけ?」と、念のため心筋梗塞の心配をし、
「祭りみてーな人混みやし、ちきねーなったんやな。
落ち着くまで座っておきまし」と、
少しでもおじいさんが安心できるよう
能登の言葉で声をかけた。
少し落ち着いて、おじいさんは汗を拭いながらようやく口を利いた。
「T君(糀屋さん)の父ちゃんとは
羽咋高校(口能登)の同級生ねんけど、家は藤波(奥能登)や」
と、輪島や穴水など奥能登の人しかわからないような、
さらに細かい同郷アピール。
「ああ、キリコの…」と何気なくつぶやくと、
ニヤリ、不敵な笑みを浮かべた。
この期におよんで祭り自慢かよっ!?
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