周囲のテントがざわめきはじめ5時半に起床する。最初はどんより曇っていたが、間もなく青空が現れた。天気予報は降水確率50%だったが、もしかしたら天気がもつかもしれない。
荷物をまとめ6時20分に蝶ケ岳に向けて出発する。
シラビソなどの樹林帯の急坂をひたすらのぼる。
「眺望のいい山にのぼろう!」と張り切っていたサルは、最初の20分で後悔している。
40分ほど歩いてからパンとポタージュの朝食をとる。
人っ子一人会わない。案内板も少ない。樹間から時々、穂高の勇姿がのぞく。
尾根にそって北東方向に直登する。
野いちごのような実があちこちにあり、熟しているものは甘酸っぱい。
動物の糞(猿?)には木の実がそのままの姿で残っている。
リンドウの紫の花も目を楽しませてくれる。
いまだにつぼみが多い。
小さな池をすぎて平坦になり、もう長塀山をすぎたのではないか、といぶかっていたら、9時45分に到着する。
「上高地4.4キロ、蝶ケ岳1.8キロ」。
妖精の池という頂上直下の池は、樹林帯の何の変哲もない水たまりだ。
もしかして頂上まで樹林帯なんじゃないか……といぶかっていたら、突然、森が途切れてハイマツの稜線に出た。
いきなり目の前に槍ヶ岳から穂高にかけての峰々が姿をあらわした。
(つづく)
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