突然取れたお盆すぎの3連休。新穂高温泉方面に向かうことにした。
富山から神通川をさかのぼり、巨大な亜鉛の精製工場がある神岡へ。イタイイタイ病とスーパーカミオカンデで有名な町だ。巨大な工場が、水俣と同様の企業城下町だったことを示している。
1泊目は平湯温泉のキャンプ場に泊まる。駐車料金1500円。テント場の利用料は1人600円だ。学生時代に買ったモンベルのムーンライトⅠテントを10年ぶりにたてたら、中がちょっとかびくさい。2人で寝るにはちょっと窮屈だが。
昼食を食い過ぎたから、夕食はカップ焼きそばとトマト、ワイン、チーズに。平湯温泉は標高1300メートルだから涼しい。
翌朝5時すぎにテントを片づけ新穂高温泉へ。7時前にロープウェーの駅に行くがいっこうに駐車場が開かない。まもなく係員がきて「第2ロープウェーの方はもっと早くあきます」と言う。そちらへ移ると車の列ができている。7時20分ごろにゲートが開いたが、ロープウェイの駅でも20分近く待たされ、結局ロープウェイに乗れたのは8時すぎだった。
正面には笠ケ岳。北側には穂高の山々と南岳、さらに向こうに槍ケ岳もみえる。
8時半に歩き始める。ロープウェイの駅は標高2155メートル。
しばらくはダケカンバやブナなどの樹林帯をのぼる。北アルプスの入門コースだけあって、ハイキング客が列をなしている。
西穂山荘までちょうど1時間かかった。
山ガールたちは「あ、アイスがある! 食べよう!」と大騒ぎ。
でも500円という値段を見てやめたらしい。
稜線上の小屋だが、眺めはいまひとつ。
「ロープウェイ駅から2キロ、上高地まで4キロ、西穂まで2.4キロ」と記されている。
西穂は無理でもせめて中間点の独標までは行きたい。
稜線を丸山(2452メートル)までのぼると、正面に笠ケ岳(2897メートル)の広く穏やかな山、振り返ると同じ高さに焼岳、南には上高地の大正池が望める。
50分ほどのぼると、雲の間にみえる突き出た峰の上にゴミ粒のような人影がちらほら見えた。
独標だ。
岩だらけの急斜面は石鎚の筒上山の山頂付近に似ている。岩場は久しぶりだからけっこう緊張する。
小屋から1時間で西穂独標(2701メートル)に到着した。ここから西穂までは1時間ちょっとだが、独標以上にけわしいピークがいくつも越えなければならない。
行く手を眺めていたら20年ほど前に大キレットを歩いた時を思い出した。しんどくてこわかった。
焼岳方面を振り返り、今回はあきらめて引き返すことにした。
12時に小屋までもどる。
もう穂高方面は雲に隠れている。
下山して調べたら、有名な白骨温泉が意外に近いことがわかり、1万円そこそこで泊まれる「旅館前田」が空いていた。
「道が通行止めになっていて、3時間かかる」と言われたがせっかくだから足を伸ばすことにした。
平湯を経由して県境の安房トンネルをぬけ、上高地への拠点の沢渡へ。そこからの林道が閉鎖中(4年前から。12月には拡幅し開通するらしい)だから、乗鞍高原にまわって反対側から林道に入る。狭い道を右に左に上に下に10キロほど走った山奥に温泉宿が姿をあらわした。
標高1400メートル。谷を流れる水の音と、霧雨のひんやりした肌触り。
静かな温泉宿やみやげ店が点在する。川ぞいには公共の露天風呂があり、旅館や飲食店もそれぞれ微妙に質が異なる源泉をもち、外風呂を提供している。
旅館前田は、元はそば屋だったがボウリングして湯がわいたのをきっかけに昭和43年に旅館にした。
古い民宿風で外見はさえない。建物内に80円の瓶のコカコーラの自販機があったりして1970年代が残っている。
でも部屋はきれいだ。
なによりすばらしいのは2階にある風呂だ。とくとくと掛け流しの湯が流れている。
ベランダ?は露天風呂になっている。白濁して、湯の花がいっぱい浮かんで、もちろん飲むこともできる。
貸し切りの湯を24時間楽しめるのだ。
夕食は、輪島塗の器に盛られた野菜の煮物や山クラゲがおいしい。おばあちゃん手作りで、地味だけど丁寧に料理されている。
不倫カップルはきれいな旅館に泊まるものだけど、こんなひなびた風呂のある旅館のほうがいいような気がする。
ビール代と日本酒代をあわせて2人で22000円。(201208)
コメント