5月、はじめて訪れた千枚田は田植えをはじめたばかりだった。
フィリピンや中国・雲南省の棚田に比べるとはるかに規模は小さいが、日本では失われてしまった風景だ。
1000枚の田のうち、一時は4割は荒廃してしまっていたという。
地元の十数軒の農家で、今も耕しているのは3軒だけ。
残りは市役所や農協、ボランティアなどが管理している。
ボランティアによる田植えの風景。
早乙女に扮した地元の中学生は、畳半畳もないような田に戸惑っていた。
8月、すっかり稲も成長し、田んぼ全体がこんもり盛り上がって見える。
オーナー田のなかに、見慣れた名前が……。ちなみに永井豪は能登出身だとか。
松の木につるされた漁具を使ったオブジェ。いったい何を意味しているのか……
水彩絵の具をはけにつけて、さあっとキャンバスにはしらせたような雲。
9月末、毎年恒例の結婚式が、刈り入れが終わったばかりの田で催された。
日没前にボランティアが3万のロウソクに点火し、日暮れとともに畦の形が浮き上がる。
松明を手にした人々が千枚田を囲む。たいまつがゆらゆら揺れる。
遠くに輪島の市街の灯がみえる。
今年から冬場の集客のため、11月12日から1月までLEDでライトアップすることに。
太陽電池でバッテリーに電気をためるエコ仕様なんだそうだ。
日が暮れると、本物の火ほどじゃないけど、棚田の輪郭が浮かぶ。
線が細くて繊細な図柄に。これはこれで美しい。
ライトアップ効果で、週末の千枚田の駐車場はいつも満車状態だった。
1月末、たてつづけに大雪が降り、千枚田も真っ白に。畦の形がうっすらと盛り上がっている。
海はゴーゴーと轟いている。
ときどき雷鳴がうめくように響く。
いつまでも冬がつづくと思われたが、2月になると日が長くなり、
久しぶりに太陽が姿をあらわした2月12日、畦があらわれた。
春の予感。
その後また雪が降るんだけど。
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