昨日の白山登山ではげしい筋肉痛だ。とりあえず白山スーパー林道を走る。白山を登ってきたあとでは景色もあっけない。紅葉もいまひとつくすんでいる。
でも、きのう（途中まで）登った山が見渡せるのは楽しい。県境のトンネルに近づくと、紅葉も鮮やかになってきた。
白川郷などは寄らず、高速道路にのって立山に向かうことにする。
SAから室堂の宿に電話を入れる。室堂までの登山道路は一般車の通行はできないという。そんなことも知らなかった。あわてて服を着替えて登山用の道具だけリュックにつめこむ。
立山のふもとの立山駅には１４時ごろに着く。ケーブルカーで標高４００メートルから９００メートルまであがる。最大傾斜２９度。貨車を連結しているのも珍しい。
美女平からはバスだ。９００メートルから２４００メートルの室堂まで一気に標高を稼ぐ。
スギの巨木などの森から、次第にブナなどの広葉樹になり、赤や黄色の紅葉がはじまる。白山よりもずっとカラフルだ。弥陀ケ原にちかづき大日岳などの岩稜が目の前に現れると「おーっ」という歓声があがる。通常ならば何時間も歩かなければ見られない北アルプスの深奥の風景がバスで見られてしまう。
道路の両脇の高さ数メートルのポールは、雪に埋もれた道の場所を示すものだという。今はGPS があるからポールがなくても道の位置を特定できるそうだ。
１時間ほどで室堂だ。荒涼とした高原。山肌にはところどころ雪が残っている。ずっと昔どこかで見た光景だ。チベットだ。
５日ほど前に雪が降り一面真っ白になったという。目の前に立山の雄山がそびえ、頂上小屋が西日に輝いている。黒部方面へのトロリーバスと接続する室堂のターミナルの上は大きなホテルになっている。バブル時代にはやったような施設だ。
翡翠色のミクリガ池のまわりをぐるりと歩く。左手の地獄谷からは湯気がたえまなくたちのぼり、硫黄のにおいがただよう。
筋肉痛のへっぴり腰で３０分歩いて「雷鳥荘」に到着する。地下１階、地上３階の立派な建物だ。
まずは地下１階の風呂へ。源泉掛け流し。白濁していて、疲れが湯にとけだすようだ。目の前に山を望みながらのんびりつかる。
ロビーでは生ビールやグラスワイン、コーヒーなどを飲める。暖炉の火があたたかい。コーヒー（４００円）は水がよいからかおいしい。
翌朝も筋肉痛はあいかわらず。登山はあきらめるしかなかろう。朝食をとり、外に出ると、空は真っ青に晴れ上がっている。「とりあえず一ノ越まで行ってみようか」となる。
８時に出発。地獄谷も、山の肌も、朝は陰影がくっきりして美しい。
登山道は石畳の散歩道になっている。沿道には雪がちらちらと残っている。
チベットの街道のような小道をのんびりと歩き、１時間ほどで尾根上にある一ノ越小屋に着く。
標高２７００メートル。立山の雄山（おやま）まではあと３００メートルだ。
急な斜面を人々が列をなして登って行く。
スパッツ姿の山ガールもいれば、軽装のカップルもいてなんともはなやかだ。筋肉痛がないときに来たかった。
東側に見える山は、鹿島槍や五竜、蓮華岳などだろうか。
「あ、槍が見える！」と歓声があがる。
南側をふりむくと、雲が切れたあとから、槍ヶ岳と穂高がくっきりと見えた。槍を見たのは２０年前に登って以来じゃなかろうか。
登頂はあきらめて足をひきずりながら室堂に下り、観光客が散歩する道沿いのベンチでカレーをつくって食べた。
別山方面の雲が切れて、剣岳が姿をあらわした。槍と剣の両方を見られるとはついている。
バスに乗ってちょっと下ると、剣と真正面から相対できる。
立山を離れるのは惜しかったが、１２時すぎのバスで下界におりる。（１０月１２日）
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