久々に滋賀へ。旧永源寺町は合併で東近江市になっている。歴史ある名前を捨ててずいぶん安易な名前にしたもんだ。旧役場はシーンとしていて、商店街も多くの店が閉まっている。合併の影響もあるのだろう。
まずは旧町中心部に近い日登美美術館へ。
安っぽい積み木を積み上げたような中途半端な前衛的な建物だ。かも隣のワイン屋に声をかけて鍵をあけてもらうようだ。はずれたかなあ、と思った。
地ワインも最近はやっているが、スペインや南米やカリフォルニアのような濃厚な味わいがあるわけでもなく、中途半端にまねるとつまらない味になることが多い。なかには、輸入ブドウだけでつくっているところもある。そのくせ高い。だから購買意欲はいまひとつわかない。
入場料は1人500円。美術館は暖房が効いていないから寒い。
予想に反して収蔵品はすごい。バーナードリーチとその子、その孫らの作品が集まっている。リーチの素描はシンプルに対象をとらえていて、わかりやすくて美しい。焼き物も味わいがある。
晩年リーチは、日本人に出会うと禅の「無」の思想を説いたという。いったい彼は禅のどんな部分にひかれ、自らの芸術活動のなかに位置づけ活用したのか--。
ワイン屋にもどると、焼きたてのパンがいっぱいならんでいる。味見をすると、どれもうまい。ワインもついでに試飲する。「にごりワイン」がここの名物だ。どのワインも地元の農家がつくったブドウを使っている。赤白10種類ほど飲んだ。欧州風のつくりにこびていないのがよい。赤よりも白のほうが無濾過のにごりワインの特徴がでている。特に「発泡にごりワイン」という名の1500円ほどの白ワインはおいしい。ワインというよりさわやかな日本酒のような味わいと言えようか。つい、買ってしまった。
永源寺町といえば、木地師の発祥の地である。ダム湖をこえて国道から離れ、山奥の集落をめざす。
政所という意味ありげな名の集落にはいると、茅葺きの家があちこちにある。谷は広く明るい。さらに奧の蛭谷には木地師の資料館があるらしいが、もっと奧の「君ケ畑」というどんづまりの集落まで行ってみることにする。
どんづまりなのに、谷は広く明るい。こんな山奥にこんな明るい隠れ里のような集落があるとは。
ほとんどはトタンで覆ってはいるが、茅葺きの民家が軒をつらねる。「木地師発祥の地」といった碑があり、中心にはミニ展示館があり、ロクロをまわす様子を撮ったパネルなどが展示されている。
集落のあちこちに、茶畑がある。昔は焼き畑、その後は林業や茶が主たる産業だったのだろう。
日本の原風景のようなムラである。
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