天気がよいから18年ぶりに六甲山を歩くことにした。
コロナ騒動で電車はガラガラだが、10時に阪急芦屋川駅に着くと、ザックを背負ったハイカーが多い。
芦屋川沿いを散りかけの桜が彩っている。高級住宅地を眺めながら何度歩いたことか。「アシヤよりアジアに住む方が楽しそうや」と言ったら「私はアシヤのマンションの方がええ」と返されたのか、その逆だったのか。
駅から20分ほどで茶屋をくぐって高座の滝へ。藤木九三のレリーフがある。
ロックガーデンの名付け親で、日本のロッククライミングの元祖のような人だ。
石鎚山の自然保護運動をした峰雲行男さんは、戦前朝日新聞に勤めていたころに藤木九三らに登山を教えられたと言っていた。峰雲さんは、高座の滝のちょっと上の洞窟にテントを張って暮らし、そこから大阪の朝日新聞まで通っていた。(「石鎚を守った男―峰雲行男の足跡―」創風社出版)
ロックガーデンの岩場をのぼるが、ハイカーが多いメインルートは疲れるから踏み跡をたどって谷に下り、「中級者コース」に出た。
フィールドアスレチックのように岩をよじのぼる場所がいくつかあり、枝道が多いから迷いやすい。人がいないから静かだ。ザラザラの岩は砂岩の一種だろうか。
岩の突端に立つと、大阪の高層ビルや港を一望できた。
1時間ほど楽しんで、11時20分にメインルートの風吹岩に合流した。なぜかネコが6、7匹もいて登山客に愛嬌を振りまいている。
正午に雨ケ峠。六甲山頂に登っても車道沿いだし、有馬温泉に下ってもこの時期に公衆浴場に入るのも気が引けるから、東おたふく山に向かう。
頂上周辺は、芝生やササの草原が広がる。昔は山焼きや草刈りをしていたからススキの山だった。今はササに覆われたが、ササを刈り払ってススキを復活させる取り組みがあるようだ。
あとは下るだけ。30分ほどで奥池の別荘地に着いた。
夏でも涼しい。広々とした敷地に別荘がならぶ。公園の桜の下で一家が弁当を広げている。環境はよいのだけど、うらやましくない。別荘地はなにものかを生み出すムラではなく、暮らしのぬくもりを感じられないからだろう。ニワトリの鳴き声でも聞こえたらいいのに、と考えていたら、コケコッコーが一度だけ聞こえた。別荘の住民のなかにも「生活」の希薄さに寂しさを感じる人がいるのだろうか。
奥山貯水池を経て、ゴロゴロ岳頂上へ。この名前は、岩がゴロゴロしているからだと思っていたら、標高565.6mだからという説もあるらしい。
ここから一気に、ゴロゴロの岩が露出した山道を下る。砂岩のような岩だから底が薄いシューズではよく滑る。
14時半、苦楽園の高級住宅地に着いた。
甑岩神社に立ち寄る。ここのご神体は巨大な岩「甑岩」だ。周辺には同様の磐座がいくつもあるという。
大坂城を築城するとき、あちこちから石を切り出し、甑岩も切り出そうとしたが、霊力が働いて石工たちが転げ落ちて倒れ伏してしまった、とされている。
どんどん下る。夙川に近づくにつれて、昔見学したマンションや通った食堂があらわれる。
無意識のうちに20年前に住んでいたアパートに来てしまった。ハッと気づいて、あわててきびすを返して「さくら夙川」駅に向かった。
FBのメッセージをチェックして、はじめて誕生日であることに気づいた。
ケーキがわり?に豆腐を買い、昨日のスープと玄米ごはんを食べた。
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