荒ぶるセッチー

ちょっと前、セッチーの婚活についてアップしたところ、本人からレスがあった。
替え歌の歌詞は「よくできている」と評価してくれたものの、
「ジョッキ何杯もじゃなくて、小ジョッキ1杯と利き酒セットだよ」
「食べたのは焼き鳥じゃなくてカニ寿司と白海老の刺身」
「オトコには振られたんじゃなくて逃げられた」
「不動産は買わないけど、2匹目のネコは飼うかも」
「田舎暮らしがしたい」等々…。
事実が明らかになるに連れ、わたしは涙で目がかすみ、メールの文字を追うのが辛くなってしまった。そして
「何かを振り切るように、髪の毛を短くし、最近金髪にしました」とあった。
セッチー、それはね。
「何かを振り切った」ってゆーより、「何かを捨てた」んじゃ…。

さすがに気の毒になって、誰か良い相手はいないかと考えていると、イトコのT君の顔が思い浮かんだ。
年齢はセッチーと同じ。身長が高く、顔は江口洋介似のイケメンだ。しかも法事に果物のお供えを持参するような、よく気が付く心優しいイマドキの若者。
いかんせん口べたで不器用なだけに、浮いた噂がなく両親も心配していた。
おお!彼がいるではないか!!
20代にバッグパッカーとしてアジアを放浪したり、職人気質で上昇志向のギラついた感じが無いところもセッチーにぴったりやんか!!
さすがに親族を人身御供にするのは気が引けなくもないが、ま、まぁ、あとは本人達のモンダイだろう。
セッチーにいちおうメールをいれてみると、
「イケメンなだけでとりあえずオッケー」と、かなり上から目線の返事が返ってきた。しかも
「思想が問題になるかな」と、自分の思想の偏りは全く気にしていない様子。

しかしセッチーがこんなに乗り気になるとは思わなかった。よし、善は急げ、だ。
さっそくTクンの姉、N子ちゃんに電話する。
するとN子ちゃんは申し訳なさそうに、
「それがね〜、わたしもビックリなんだけど、T、先週婚約したのよ〜。おととい親から聞いたところなの。ごめんね〜。せっかくのお話…」
でもちゃっかり屋のN子ちゃんは
「ちなみにどんな人?」と聞くのも忘れない。
「う、ううーん…多少キズありってゆーか、あ、でも、瑕疵物件ではないから!」
わたしはこう説明するのが精一杯だった。

「ごめんね。玉砕どころか出撃前のエンジントラブル…みたいで」と、セッチーにコトの顛末をメールすると
「ほんまに連絡したんかい!しかもそのオチかい!」
生き残りの特攻隊員…とゆーより、獲物を逃した猛獣のようなふて腐れ方だった。

その晩、寒冷前線の影響で北陸地方は雷、突風の大荒れの天気となった。
窓に激しく打ち付ける雨音を聞きながら、「セッチーが怒ってるみたいだ」と身を固くして眠った。

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